世界観紹介
スミーの世界――ようこそ、私へ
目次
【はじめに】
やあ、こんにちは。私はスミー。
山の使いとして生きて、森の奥に住んでいる。
「住んでいる」から、スミー(住)っていう名前なんだ。
今日は私が暮らしている世界について紹介しよう。
【深山の拠点】
私が住んでいるこの山は、意思を宿して生きる不思議な山なんだ。
名前も知らない動物たちが精霊として現れる、生命の神秘に満ちた場所。
豊かな森が生い茂り、小川の潤いは絶えず、清らかな鏡のように湖が凪ぐ。
森に囲まれた湖の近くには、一軒のログハウスがある。
その家が私の中心。日常の拠点だよ。
【凪の湖】
自宅のそばには、静かな湖がある。
この湖はね、生きた山の意識と無意識を、とても正直に映してくれる鏡だよ。
空の模様をそのまま水面に写し、風が吹けば波立ち、雨が降れば少し濁り、魚が時折跳ねる。
ごくたまに影のような何かが……遠くでゆっくりと蠢く気配がする。
かつてはこの湖に有害な生き物が跋扈して、毒沼のような様相だった時期もある。
それが、ある時期から突然、平らに澄み渡った。
本当に突然だった。数年前のことだ。
生き物たちも、まるで嘘のように落ち着いた。
私はこの状態を「凪」と呼んでいる。
いつまた波立つかは、わからない。でも、そのことも受け入れるつもりだよ。
【感情の生態系】
この山にとっての思考や感情は自然現象と同じで、いろんな表れ方をする。
辺りの生き物たちもその象徴を担っているし、空模様や風の巡り、川のうねりも感情の一部だ。
今日は穏やかな天気で風も気持ちがいいね。風につられて湖面がそよいでいる。
君が見てくれていること、喜んでいるんだよ。
【思念の森】
自宅と湖を囲むように、森が覆いつくしている。
この森の木々や草花には、思考のネットワークや、まだ言葉にならない想いが宿るよ。
揺れる葉が囁き、色づく果実がささやかなアイデアを運んでくれる。
森全体に感情の生態系が染み渡り、気まぐれな風や雨、獣たちが生き生きと息づいている。
奥へ進むと、獣だけが通れる未開の原生林に続く。
私には藪が深すぎて入れない。
幼い頃の私は、この一帯をただの「山」として知っていた。
やがて少しずつ開拓と植林が進み、今の自宅付近が整備されていった。
このログハウスも、森の木々を丁寧に拝借して時間をかけて組み立てた、私の観念の結晶なんだ。
【聖獣ナマケモノ】
庭先に一本の広葉樹が空高く伸びているね。
上の方に何かいるのが見えるかな。
そう、巨大なナマケモノだ。
あれは森のヌシとも呼べる存在で、私の理想を象徴しているんだ。
ナマケモノは自分なりのペースを保ちながら、独りで、静かに、隠密に、省エネ戦略で生き延びる。
それは私にとって心地のいい生き方でもあって、親近感を抱く対象なんだよ。
【黒い狼】
私が腹を立てるとき、この森には狼が出る。
真っ黒な毛並みをしていて、異変を察知すると唸り、銀色の目で睨みつけてくる。
この狼は怒りや警戒のような鋭い感情を秘めているよ。
今でこそ森の番犬として役立ってくれているが、昔は敏感に暴れて、私に噛みついて……。
扱いには長年苦労してきた。
それを思えば、ずいぶんと大人しくなったものだな。
【記憶の墓場】
庭の裏手に小高い丘が見えるだろう?
あそこは墓地なんだ。思い出の残骸が眠る場所。
墓地には幽霊が暮らしていて、記憶が活性化すると起きてくる。
例えば、ほら。墓石に座ってじっとしている霊の姿が見えるね。
あの墓の下には、深く傷ついてそのまま眠り続けた記憶がある。
ふと思い出したとき、霊が気づいてほしそうにそこで待つんだ。
私は時々、墓の花を替えに行ったり慰めたりするよ。
それと、ここにいるのは怨霊ばかりじゃない。
あそこで遊んでいる霊のそばには、とても幸福な記憶が宿っている。楽しそうだね。
【聖域の洞窟】
今日は特別に、秘密の場所も教えてあげようか。
ただし口頭だけで説明するよ。
あくまでも秘密の場所だから、迂闊に人を招きたくないんだ。
とある洞窟の突き当たりに祠を建ててある。
その祠は、山の生命活動そのものを祀るために作った。
森の生態系だけではない。土壌や鉱物資源、地下水脈もまた、山が身体を持って生きているしるしだ。
私はその「大地の息遣い」にも想いを馳せ、共に寄り添いたいと願う。肉体を慈しむように。
祠の手前の通路には私の大切な価値観、信念、そして嗜好が、コレクションとして保存されている。
それらは、地蔵のような彫像、記号的な置き物、タペストリー等の形で飾ってあるんだ。
洞窟内は決して誰にも侵されたくない、神聖な区域なんだよ。
【麓の里】
少し出かけるとしよう。
よく使い込んだこの自動車が、私のお気に入りでね。
外界へ向かうための、大切な移動手段なんだ。
舗装された山道を下りていくと、民家がぽつぽつ見えてくるだろう?
そこが外界との接点。ちょっと遠いけれど、「ご近所さん」に該当する場所だ。
私にとっての身近な人々が暮らす里で、山を下りるときはここを通る。
向こうに電波塔が立っているね。あそこから山のほうへ情報を送ってくれるから、山奥でもインターネットが使えるんだ。
この山道が綺麗に舗装されているのも、外からの開拓者たちが作ってくれたおかげだよ。
【平野の街】
里山を抜けた先には、賑やかな市街地が広がっている。
人の話し声が息づく商店街。煉瓦造りの古い駅舎。複雑に絡み合う道路の架橋……。
精巧な建造物が立ち並ぶ様子に、時々圧倒されながらも、つい見入ってしまう。
私はここで、道中のドライブを楽しみながら買い物をすることが多い。
でも、長居はできないな。
やっぱり山奥の静けさが、私には一番落ち着くんだ。
【おわりに】
街から眺める自分の山は、案外小さく見えるね。
どんなものでも、遠巻きに見ればそういうものかもしれない。
でも私にとってあの山は、豊かで、深くて、立派で……大切な命そのものなんだよ。
山を手入れする者として、これからもこの世界を守り続けたいと思っている。
さて、私が住む世界の紹介はここで一区切りだよ。
ここまで耳を傾けてくれて、どうもありがとう。