くたばれ先代の巻
2020年9月5日
~くたばれ先代の巻~
先代タイナがかつて好きだった音楽を、ほんの軽いきっかけでまた聴こうとするカイツとツィシー。
二人とも当時のことはもう、結局何が嫌だったのか、詳しい部分までは思い出せずにいる。
ただ嫌な感じだけを覚えているような、反応の抜け殻がくっついているだけ。
音楽プレーヤーのスイッチを入れた途端、あの歌が甦る。
熱が出そうだというツィシー。反射的にそわそわして落ち着かない様子。
カイツも表情は浮かないが、冷静に聴いている。
「この曲自体は、中々良いな。音が綺麗だろ。ずっと聴いていられる」
「あぅ……あたしは、長くはムリです……呪いのテープといっしょなのです」
「なはは! ある意味そうだよなぁ」
「ここにお前のタスケテーェ↑ (裏声) が入ってたら確実に曰くモンよ」
「かべには……あるです」
「あー、そうだっけ?」
「いっぱい」
「……あー。そうだっけ」
「わりぃ、聞かなかったことにしとくわ」
楽しげに洗練されたリズムにつられ、少しずつではあるが、ツィシーは抵抗を解きつつあった。
そう、この音楽に罪はない。
だんだんお互いに乗り気な表情を浮かべている。
すっかり上機嫌になったカイツは、倉庫からギターとバイオリンを持ち出し、二人で演奏をはじめた。
「うおー、くたばれ先代ー!」
「くたばれーですー!」
「まあ、とっくにくたばってるけどな」
「だが関係ねえ! 呪縛を全っっ部ブチ切ってやらあ!!」
「おーっ!」
一方、七室の太金
「うぇっ!? 急に寒気が……ワタシのこと噂しました?」
「んー? 誰かが先代を呪ったのかもね?」
「あの先代なら仕方ないですね……」
「あんまり無防備に受け入れてちゃダメだよ。それも先代と同じだから」
「すみません……」
「もー、そういうとこー」
「とりあえず呪詛返ししとくね!」
『先代は 終わるべくして 終わりました……』
『自由な今は 望んだ通りの 快適な時代を つくれます……』
「祈りをこめて~~~送信っ」
「……結局これも気休めで、復興がすむまでの時間稼ぎだけどね」
「あはは。まーいっか!」
~おわり~