恥ずかしさの感触
2022年6月15日
恥ずかしさに、耐えられない
- 水 「うーん……やっぱり恥ずかしさが抜けないわ」
- 水 「無性に恥ずかしくて居たたまれない。毎日そうよ」
- 水 「しかも今までとは違って、それを我慢できなくなりつつあるの」
- 水 「今はね、まるで……服の中に虫が入ってしまったみたいな感覚で……」
- 水 「すぐにでも取り除いて無かったことにしたい。苦痛から解放されたいわ」
- 金 「服の虫かあ~」
- 金 「妖精が入られても、それはムズムズしてすっごい嫌だね!」
- 水 「そうよ。私たちは妖精や羽虫とも親しいけれど……」
- 水 「虫がいくら平気だからって、服の中は流石にダメよ。例え話でも」
- 金 「それってさ。結構えっちなシチュエーションじゃない?」
- 水 「え?」
- 金 「別の意味で恥ずかしくなれて、あたしは好きかも」
- 水 「なに目覚めちゃってるのよ」
- 金 「アハハ、目覚めたんじゃないよ。元々だよ」
- 水 「相変わらずね……」
恥ずかしさは、あったかい
- 金 「スズハは自分が『恥ずかしい、恥ずかしい』って思うことに耐えられなくなってきたんだよね?」
- 水 「そう」
- 金 「もしかしたら肌寒いんじゃないかなーって思ったよ!」
- 水 「肌寒い……?」
- 金 「うん。寒くて寒くて服を探してる。何枚着ても足りないくらい」
- 金 「厚着で苦しいのが、今なんじゃないかなーって」
- 水 「そういう例えも……有りね」
- 金 「気分で包むのは、あたしも皆もフツーにやってるから怖くないよ。責めてるみたいに聞こえたらごめんね」
- 水 「あら、キイクーも? それは意外。今どんな『気分の服』を着ているの?」
- 金 「透明かな~」
- 水 「服として大丈夫!?」
- 金 「ぜんぜん意識してなくて、体ごと透明になってた気分だよー。着けてることも忘れちゃうよね」
- 水 「つ……つまりは快適ってことで、いいかしら……」
- 金 「そう、それで合ってる!」
- 金 「『恥ずかしい』の服は繊維がイガイガしてるけど、安くて気軽に手に入るんだよねー……」
- 金 「それがあるおかげでスズハは、今までどうにかやっていけたんだし、仕方ないよ」
- 金 「『恥ずかしい』っていう気分の服を着ていたら、少しはあったかくて、もっと着ていたくなる……みたいな?」
- 水 「恥ずかしいは、暖かい……?」
- 水 「そうかも……」
- 水 「…………」
- 金 「………………」
- 水 「……そんな気がしてきたわ。暖かい気分」
- 水 「次にまた恥ずかしくなっても、これなら落ち着いていられそう」
- 金 「安心感もあって一石二鳥だね!」
- 水 「ええ。そもそも安心感があるなら、わざわざ恥ずかしさで武装する必要がないもの」
恥ずかしさも、消えていく
- 金 「いい気分って『気にならない』性質があるから、すぐに解けてどっか行っちゃうんだ」
- 金 「だから、恥ずかしいって気分のことをラクに思えたら、忘れるのも早くなって、恥ずかしくなくなると思うよ」
- 水 「へえ、消化に良い感情は解けるのが早いのね。経験則かしら?」
- 金 「うん!…………あっ……」
- 水 「な、何? 急に」
- 金 「ここにいるあたし達も、ある意味そうなんだよね?」
- 金 「そういう系の存在」
- 水 「……ええ、まあ」
- 金 「特にあたしは液体みたいだなーってずっと思ってた……けど…………」
- 金 「溶けてなくなるのはイヤだな……」
- 金 「やだなぁ…………はは……」
- 水 「次は、あなたの番のようね」
- 水 「だけどキイクー、溶けても平気よ。乾けば固体があるから」
- 水 「しつこく残る性質もたまには役に立つでしょう?」
- 水 「丈夫な囲いを作ってあげる。私は建築家だもの、任せて頂戴」
- 水 「滅びに負けても遺せばいいわ」
~おわり~