露店で開店、冷やかし中華

2021年4月11日

前編

  • 水28 「カイツが期間限定の屋台を出しているそうよ」
  • 金19 「へー!」
  • 水28 「早速だけど冷やかしに行きましょ」
  • 金19 「行きたい行きたーい。冷やかすのはナシだけどねっ」
  • 水28 「そう止めると分かっていたわ。冷やかしは良くないって」
  • 水28 「でも見て、ここの広告。『か』が小さく書いてあるでしょ」
  • 金19 「冷やかし中華だ!」
  • 水28 「いかにも突っ込んで下さい冷やかして下さい、とでも言いたそうじゃない」
  • 水28 「だいたい、夏でもないのに冷やし中華、しかも露店でやるのよ? 突っ込み所が多すぎるわ」
  • 金19 「アハハ、これは思う壺だねー。あたしも気になるから、確かめてみよっか」

~ カイツの屋台 ~

  • 火12 「いらっしゃーい。お前らも広告見てくれたんだな?」
  • 水28 「それで冷やかしに来たのよ」
  • 火12 「あんだよ。野次馬なら帰っとくれよー」
  • 金19 「うんわかった!」
  • 火12 「アッちょちょちょっとお、冗談だっつーのー!」
  • 火12 「帰るならコレを買ってからだ」
  • 火12 「あー、すまん。丁度さっき出た分でさあ、麺のストック切らしたんだわ」
  • 金19 「たくさん置いても麺が伸びちゃうからねー」
  • 火12 「まあ、そういうこと。ちゃちゃっと茹でるから待っててくれよな」
  • 金19 「ところでどうして冷やし中華にしたの?」
  • 水28 「そうよ。まだ初夏ですらない、桜もようやく散りかけた季節に……」
  • 水28 「流石のカイツでも気が早すぎじゃないかしら?」
  • 火12 「一言余計だなオイ」
  • 火12 「しかしよくぞ聞いてくれた。そこがビジネスチャンスなんだよ!」
  • 火12 「夏に夏のもん作ったってどうせ『ふーん』で済ますだろ?」
  • 火12 「春といってもな、これから日差しがキツくなって、5月になったらみんな暑い暑いって言い出すぜ」
  • 金19 「たしかにー」
  • 火12 「そこに涼しいやつをドーンとやって話題をかっさらう。どうよ!」
  • 水28 「やっぱり早合点な気がするわ」
  • 火12 「うるせえっ! マジな冷やかしじゃねーか」

後編

  • 火12 「実はな、ちょっと前に別んとこでも出してたんだよ。牡牛座の農家には好評だったぜ」
  • 金19 「いいなー。畑仕事の後だから絶対美味しいよ!」
  • 水28 「ふーん、販売実績があるってことね。それなら……大丈夫かも……」
  • 火12 「よーしその意気だ、へへ」
  • 金19 「チョロいって思った? 今」
  • 火12 「おい! 下心突くな!」
  • 火12 「まあいい。麺もできたし……盛り付けてだな……」
  • 火12 「見ろよ! これが今年の傑作、特製冷やかし中華だ!」
  • 水28 「早速いただくわ」
  • 火12 「先に代金くれよな?」
  • 水28 「む……言われなくても」
  • 金19 「冷やし中華にしては安いねー?」
  • 火12 「テイクアウト式の露店だしな。手頃なサイズにしたんだよ」
  • 火12 「あとこれ、少な目の量にしてある。残して余っても困るだろ?」
  • 水28 「それは助かるわ」
  • 火12 「ま、足りなかったらバンバン頼んでくれや。替え玉もあるぜ」
  • 金19 「この白いシャキシャキはなーに?」
  • 火12 「春玉ネギの刻みピクルス。夏には真似できねー特別レシピよ」
  • 金19 「柔らかくて美味しい!」
  • 金19 「このシャリシャリはー?」
  • 火12 「出汁のかき氷だよ。味変にもなるし、薄くならない」
  • 火12 「これも真夏だったら、秒で溶けちまうけどな!」
  • 水28 「冷やかしどころか、普通にちゃんとした冷やし中華だったわね」
  • 火12 「だろだろ!? 開発した甲斐があるわー」
  • 金19 「ご馳走さまでした!」

~おわり~

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