水ゼリー後編(隔離枠)
※ カイツとスズハの水ゼリー の続き
2021年6月17日
- 火12 「しかしまさか、差し入れくれるとは思わなかったからビックリしたわー」
- 水28 「双子座の方面はあんたが頼りなのよ。これからも……、いえ、これからこそ。しっかり働いてもらわないと」
- 火12 「けっ。なんだよその言い方~」
- 水28 「世間では風の時代、胎魚国では火星の時代が控えている。そんな今こそあんたが必要ってことよ」
- 火12 「あー。それこそお前、太陽の履修がまだ追い付いてねーんじゃねーのかあ? 火星の心配してる場合かよ~」
- 水28 「…………」
- 火12 「へへっ。図星か」
- 水28 「あの……その件で……話があって……」
- 火12 「……知ってる。俺もぶっちゃけ言いたくなかったけどよ」
- 火12 「胎魚国がいつ消えてもおかしくないって、だいぶ前から散々聞かされてたじゃねえか。ちなみに今どうなってんだ」
- 水28 「相変わらずよ。去年からずーっと、あんな調子だわ」
- 水28 「タカ族による土地の解体があちこちで自然発生している。私達だっていわば、彼らに創られたようなもの。いつバラバラにされて、記号未満の蒙昧な何かに戻されるかわからない」
- 火12 「タカ族って、この国を丸ごと開拓してくれた功労者なんだろ。わざわざ壊す側に回られてもな……」
- 水28 「タカ族の開拓地で発生した炎症が、そのきっかけを悪化させたともいえるわ。それが昨年の倫理疫として猛威をふるった」
- 火12 「あれでタイナがまたダメになっちまった。もともと時間の問題ではあったがな。悔しいったらない」
- 水28 「同感よ。私は悔しくなかったのだけど、今その言葉を聞くと、やはり無念だわ」
- 水28 「森から遠吠えが聞こえてきたわ」
- 火12 「月の仲間か。あの中に、ツィシーも……」
- 水28 「しているのでしょうね。遠吠えを」
- 水28 「このまま復興する気も起きずに、滅びるのを待つしかないんじゃないかって、そう思う」
- 火12 「抵抗してもどーせ淘汰されるってか。誰にだよ」
- 水28 「……もはや、外部のせいではないわ」
- 火12 「くそ。じれってえな」
- 水28 「土地は全て消え去り、辛うじて私達数人だけが残り、そんな私達もかつての立場を剥奪され、何のために居るのか分からないハリボテになる」
- 水28 「まあ既にそうかもしれないけれど?」
- 火12 「おい、縁起でもないこと言うなよ。今のはさすがの俺でも言い過ぎだとわかる。言うな。そんなこと」
- 水28 「ちょうど今、あんたと居なかったら私も危ないところだったわね」
- 火12 「もう手遅れな気がするけどな……」
- 水28 「いいえ、どうにか。おかげさまで助かったわ」