タイナとメイヤ part1
2019年12月28日
先代の墓
- 太 「そういえば、先代の墓ってあるんですかね。お参りしようかなと」
- 冥 「ありません。強いて言うならあの山がそうです」
(西日が傾きつつある山を指さし、二人はその方角をまっすぐ見つめる)
- 太 「メイヤが住んでる山だ」
- 冥 「はい。貴方が生まれ育ったあの森で、歴代のタイナは水と砂粒、木や虫たちの一部となり、この世を循環しています」
- 太 「跡形、もうないんですね」
- 冥 「貴方がいるじゃありませんか」
- 太 「……あの、それって」
- 冥 「遺影も必要ありません。全員同じ顔をしています」
- 太 「同じ……ですか」
- 太 「結局、先代たちはもう戻らない。山の自然に混ざりきって、思い出だけが彷徨っている……」
- 冥 「そうです」
- 冥 「……拠り所が恋しくなりましたか?」
- 太 「少し寂しい」
- 冥 「時の流れには逆らえません。今のタイナは貴方。それだけで充分です」
森暮らし
子タイナとメイヤの森暮らし
「めいや! きんの すずの おはな です!」
「はい。そのお花で間違いありません」
「きれい です ほしい です!」
「タイナ。そのお花を、お皿の上に置いて下さい」
「……」
「お花をお皿に置いて下さい」
「はい!」
「よくできました」
「今からこれで薬を作ります。よく見ていて下さい」
「はい」
「あー おはな が なくなる!」
「花では無くなりましたが、形を変えただけです」
「いい におい が します」
「ということは、体質に合うようですね」
「これは傷薬。木の実に詰めて持ち歩きます」